,

ブックリヴュー:『ハンチバック』(市川沙央 著、文藝春秋 刊)

 2023年、第128回文學界新人賞、第169回芥川賞受賞作品を読んだ。ずっと友人から勧められていた小説である。右肺を押しつぶす形で極度に湾曲した身体の持ち主であり、両親が遺したグループホームのオーナー兼利用者の、主人公の井沢釈華の物語。釈華の身体の構造だからこそ見える景色が、勢いのある言葉でつづられている。性は生、ということも考えさせられる作品でもあった。子どもの頃から厄介な身体で、若い時に難病に、身体には障害を持つ私は、悲しく悔しい思いもたくさんしてきた。身体に関することで、健常者だったら、ここまでのどす黒い感情を持つのかと自問自答もし続けてきた。しかし、本書を読み、罪悪感を抱く必要などないという答えを見出した。少しだけ救われた。

ISBN:978-4-16-391712-2
Cコード:0093
四六変型判 96ページ
定価:1,300円+税
発行:文藝春秋