ムーヴィーリヴュー:『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』My Salinger Year(監督 フィリップ・ファラルドー)

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(原題:My Salinger Year)
監督:フィリップ・ファラルドー
出演:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブースなど
2020年
Amazon Prime Video

 作家志望のジョアンナが、ニューヨークの歴史ある出版エンジェンシーに就職し、アシスタントから、作家の担当を持てるまでを描いている。ジョアンナ・ラコフの実体験を描いた『My Salinger Year』が原作。そのエンジェンシーはJ.D.サリンジャーの代理人であり、ジョアンナは、彼のファンレターの処理係と、アシスタントとしてサリンジャーと交流することで、作家になることを諦めずに生きることを選ぶ、という話。『プラダを着た悪魔』に似た内容で、おもしろい。また、有名人を支えたり版権を商売にしている産業の、その有名人の直接の担当を経験したことがある人が、黒子に徹し、その関係性を披露しない中、原作者のように、公にする図太さも、良いか悪いかは別として、興味を引く。とはいえ、私が知る限り、本の産業の人は、どの職種の人でも、書くことが好きな人が多い。作家を目指している人もいる。音楽産業の人は、演者を支えることで生活しつつ、自分自身が演者になる目標を捨てていない人もいる。でも生活があるし、その立場にいることへの、世間からの賞賛は捨てられない。だから勤務先や業務委託先との仕事は辞めない。作中、ある作家が、ジョアンナに、何をおいても、対人関係が悪くなっても、書くことが優先であることを話すシーンは印象的であった。主役のマーガレット・クアリーは大変魅力的な女優で、バレエを躍るシーンは優雅で美しかった。誰もが煙草を吸っていた1990年代のお話。