Cコード:3010
A5判 572ページ
価格:6,300円+税
発行:名古屋大学出版会
2023年12月6日にスタートした、本の紹介ブログサイト「16 pages(16ページ)」です。平日の午前に、公開日前後に発売の書籍や雑誌などの情報を掲載します。Amazon Affiliate リンクを含みます。 ※都合により、24年7月29日からしばらくの間、休載します。
『グータラ小説家』(原題:Book Week)
監督:ヒース・デイヴィス
出演:アラン・デュークス、スーザン・プライアー、エアリー・ドッズなど
2018年
Amazon Prime Video
オーストラリアの映画で、原題は『Book Week』。主人公のニックは、高校で英語教師の職に就き、1作だけが世に出ている小説家。破天荒な性分の独身の中年だが、職場に恋人はいるし、父親とは不仲だが、妹との関係は良好、教育者としても悪くない。本の催しが行われるブックウィークと、出版社側から2作目の刊行の条件を課された時期が重なり、そこで繰り広げられる話が描かれている。タイムパフォーマンスこそに価値があると声高に叫ぶ人が多い中、本作を評価する人は多くないと思う。合理主義者は芸術が無駄から生まれることを知らない。しかし、日々の糧を得ることと、自身の何かしら表現活動を同等に考えている人は、心打たれることだろう。もちろん本が好きな人も。ところで、本作には出版社の人間が出てくる。雰囲気が、小説や映画やドラマで描かれる、昔のアメリカの奴隷商人や日本の女衒(せげん)のようだった。プロの仕入れを職業とする人の顔をしていた。もし、この映画を見る機会があったら、着目してみて欲しい。
著者が19歳の時に、2003年下半期芥川賞を受賞した作品。事前の情報はこのくらいで、読み進めた。周囲に溶け込めない主人公の初実ハツが、同級生の男子、にな川と心を通わせる話である。自分の高校時代は、暗い思い出ばかりだから、この年代の話は、構えてしまうのだが、過去の記憶が良いものに変わりそうなくらい、爽やかな印象の残る青春小説だった。「さびしさは鳴る」の冒頭も良かった。読了後、この書き出しが評価の高いものであることを知った。名作に触れられ、大変満足。
『どん底作家の人生に幸あれ!』(原題:The Personal History of David Copperfield)
監督:アーマンド・イアヌッチ
出演:デヴ・パテル、ピーター・キャパルディ、ヒュー・ローリーなど
2019年
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イギリスのチャールズ・ディケンズ(1812-70)の『デイヴィッド・コパフィールド』が原作の映画。この小説家の作品は、はるか昔の学生時代に『大いなる遺産』を読んだが、本作は、ディケンズ原作と知らずに見た。子ども時代、お金に苦労した本人の自伝的要素が強い作品とされ、映画でもそれが、明るく描かれている。主人公から脇役まで、人種の多様性を意識した、というか、意識し過ぎた配役も大きいのかもしれない。幸せに終わる物語でもある。映画の原題は『The Personal History of David Copperfield』。原題をそのまま生かした邦題のほうがよい場合があり、本作はそのタイプだ。ところで、作家のデイヴィッド役のデーヴ・パテールは『スラムドッグ$ミリオネア』の主人公の男の子。立派な俳優になったものだ。