カテゴリー: Editor’s Choice 愛書家のための映画

  • ムーヴィーリヴュー:『ティファニーで朝食を』Breakfast at Tiffany’s(ブレイク・エドワーズ 監督)

    『ティファニーで朝食を』(原題:Breakfast at Tiffany’s)
    監督:ブレイク・エドワーズ
    出演:オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニールなど
    1961年
    Amazon Prime Video

     アメリカの作家、トルーマン・カポーティ(1924~84)原作の、60年代のニューヨークが舞台の古い作品。
     作家志望の青年ポールが、隣人の風変わりなホリーと親しくなる。ポールは、彼女の華やかな生活の裏にある、複雑な内面や苦悩、夢を秘めた魅力に惹かれていく。友情が深まり、想いを寄せるが、2人の価値観は衝突する。だが、おそらくこれから結ばれるのだろうという最後で終わる。
     本作は、原作の龍口直太郎の旧訳と村上春樹の新訳とは異なる。もし、映画も小説も触れたことがない方は、先に、原作か邦訳本をお読みになることをお勧めする。映画は原作と切り分けて見たほうがよく、主演のオードリー・ヘップバーンを楽しむためにある。洋服やインテリアなど、全ての女性が参考にできるセンスが詰まっている。

  • ムーヴィーリヴュー:『長崎ぶらぶら節』(深町幸男 監督)

    『長崎ぶらぶら節』
    監督:深町幸男
    出演:吉永小百合、原田知世、高島礼子、原田知世、藤村志保、いしだあゆみ、渡哲也など
    2000年
    Amazon Prime Video

     なかにし礼(1938~2020年)の小説が原作の、明治から昭和が舞台の映画である。
     長崎の花街丸山で、10歳から奉公し、三味線と唄に秀でた芸者愛八と、長崎の郷土研究家の古賀十二郎の、中年の恋の物語だ。長崎の古い唄を探すために、2人は老芸者らを訪ね歩く。忘れられた名曲「長崎ぶらぶら節」にも出会うが、旅が終わる頃には、2人の関係は終わる。古賀は妻を選んだ。
     吉永小百合扮する愛八の死ぬ間際の言葉は「会いたか、古賀先生」。古賀は、別れた後に、愛八に誠意を金銭で尽くすが、人格者で知られた故渡哲也が演じることで、男の狡さが際立ち、見ている側をやきもきさせる。さらに、愛八は、略奪してでも古賀と一緒にいたほうがよかったのではと。
     芸者や妾の役がよく似合う吉永小百合、「長崎ぶらぶら節」を披露する長崎出身の原田知世、強気な女の役がぴったりな高島礼子、子役時代から可哀そうな人を演じるのが上手い高橋かおりなど、女優ウォッチも楽しめる作品だ。
     大叔父が古賀十二郎に師事していた。興味深く映画を鑑賞した。

  • ムーヴィーリヴュー:『風と共に去りぬ』Gone With the Wind(ヴィクター・フレミング 監督)

    『風と共に去りぬ』(原題:Gone With the Wind)
    監督:ヴィクター・フレミング
    出演:ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲイブルなど
    1939年
    Amazon Prime Video 前編 Amazon Prime Video 後編

     米南部アトランタ州ジョージアで生まれた、小説家のマーガレット・ミッチェル(1900~49)原作の作品である。同国では39年、日本では52年に公開。
     南北戦争前の、南部の壮大な農園で暮らす強気な美女スカーレット・オハラが主人公の物語。戦争の影響で生活が崩壊し、彼女は生き残りをかけた戦いに身を投じる。苦難を乗り越えつつ、故郷を守るために立ち上がる彼女の波乱に満ちた旅が描かれる。と同時に、男性運に恵まれない女性の話でもある。
     「この世で唯一価値あるものは土地だけだ。土地は永遠に残る」「神様に誓います。二度と飢えません」「明日は明日の風が吹く」など、本作を見たことがなくても、誰もが知る名言を残した映画だ。人間が、特に女性が生き抜く術、人生のどん底から這い上がるための心の持ち方、雇われずに主人として成功するための秘策、雇われるならどういうふるまいをすれば主人に気に入られるかなども、よくわかる。
     人種問題が気になる作品だが、女性も男性も一生に一度は見たほうがよい映画である。

  • ムーヴィーリヴュー:『プラダを着た悪魔』The Devil Wears Prada(デヴィッド・フランケル 監督)

    『プラダを着た悪魔』(原題:The Devil Wears Prada)
    監督:デヴィッド・フランケル
    出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチなど
    2006年
    Amazon Prime Video

     名門大卒のジャーナリスト志望の主人公アンドレアが、一流ファッション誌の厳しい編集長ミランダの下で前向きに働く姿を描いた物語。
     田舎からニューヨークに出てきた彼女は、ファッションにも業界にも興味がないのにもかかわらず、ミランダの第2アシスタントの職を引き受ける。過酷、かつ、無謀な要求にこたえるのが彼女の仕事だったが、しだいに、ファッションセンスも磨かれ、業務にも慣れていく。しかし、ミランダの成功と引き換えの代償や業界の現実を知ってしまった上に、自身の私生活での危機に直面したことで、我に返る。彼女は自分の信念を貫くため、ファッションの世界を去り、ジャーナリストの道に進むことを決意する。
     人間の強欲さが明るく描かれた作品である。ジャーナリストの世界にも不条理なことはあるだろうが、主人公は良い選択をし、ハッピーに終わるのが清々しい。

  • ムーヴィーリヴュー:『沈まぬ太陽』(若松節朗 監督)

    『沈まぬ太陽』
    監督:若松節朗
    出演:渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香など
    2009年
    Amazon Prime Video

     1985年に起きた日本航空123便墜落事故を題材に、組織の腐敗と権力闘争、主人公の苦悩と葛藤を描いた山崎豊子原作の作品。
     主人公の恩地元は、「国民航空」の組合委員長として正義を貫いた結果、会社と対立し、10年にも及ぶ海外勤務を命じられる。帰国後は、事故の調査委員会の事務局長となり、様々な困難に直面しながら、遺族のために戦い続ける。
     中年以上の人は御巣鷹山ジャンボ機墜落事故を思い出し、勤務者や請負で仕事をやっていたら、人や組織にお仕えするとはどういうことだろう、などを考える作品だ。さらに、忖度なしに組織はあり得ないとも。
     昔に読んだ原作も泣きながら読んだが、本作も涙がとまらない作品だった。演技がうまい役者が勢ぞろいし、撮影には莫大な予算が組まれたこともよくわかり、制作された2009年からの時代の移り変わりに対しても切なくなった。

  • ムーヴィーリヴュー:『ノッティングヒルの恋人』Notting Hill(ロジャー・ミッシェル 監督)

    『ノッティングヒルの恋人』(原題:Notting Hill)
    監督:ロジャー・ミッシェル
    出演:ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント、ヒュー・ボネヴィルなど
    1999年

    Amazon Prime Video

     ロンドンの旅行書専門書店主を営むウィリアムは、アンナ・スコットという有名なハリウッド女優と出会う。2人の間には異なる世界の間に火花が散り、ロマンスが生まれる。しかし、対照的なライフスタイルの違いや、アンナのキャリアが困難を引き起こす。最終的には、2人の愛が、現実の障壁を乗り越えられるのか。以上が、要約である。
     時を共にする男女は、譲り合いの精神が必要ということだろうか。あり得るようなあり得ないような物語の本作は、いつ見てもおもしろい。
     映画の公開から25年。ウィリアムとアンナがどうなったのかは知りたいところではある。

  • ムーヴィーリヴュー:『眺めのいい部屋』A Room with a View(ジェームズ・アイヴォリー 監督)

    『眺めのいい部屋』(原題:A Room with a View)
    監督:ジェームズ・アイヴォリー
    出演:ヘレナ・ボナム・カーター、ジュリアン・サンズ、ダニエル・デイ=ルイス、マギー・スミスなど
    1986年
    Amazon Prime Video

     イギリスの小説家、エドワード・モーガン・フォースター(1879〜1970)の『A Room with a View』が原作の映画。
     時代は1907年。イギリスの良家の令嬢ルーシーと、イタリア・フィレンツェを旅行している時に知り合ったジョージの恋を描いている。封建的な時代の自由恋愛がテーマともいえる作品だ。
     話は、複雑なものではない。しかし、プッチーニのオペラ、ルーシーが弾くピアノ曲。本作が名作と言われる理由は、これらの音楽が人の心に残るからだろう。
     デジタル化の世の中に少し疲れている方で、恋愛作品を見たい方には、お勧めしたい。電子機器は全く出てこない。

  • ムーヴィーリヴュー:『雨月物語』(溝口健二 監督)

    『雨月物語』
    監督:溝口健二
    出演:京マチ子、水戸光子、田中絹代など
    1953年
    Amazon Prime Video

     安土桃山時代が舞台の、欲望に翻弄される人々を描いた作品。
     貧農の陶工、源十郎は、若狭という女と知り合い、家族を捨てて生活を共にする。ところが、女は死霊であることがわかり、村に帰るが、妻は既にこの世にいなかった。源十郎は自分の過ちに気がつき、勤勉な陶工になる、というのがあらすじである。
     源十郎や義弟、村人や町人、足軽らの言動や行動からしても、人間は愚かな部分があり、さらには、技術が進化した現代人と変わらないということがよくわかる映画である。人によっては教訓にできることもあるだろう。
     原作は、江戸時代の読本作者、上田秋成(1734~1809)による『雨月物語』の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」で、フランス人作家ギ・ド・モーパッサン(1850~93)の『勲章』も元になっているという。