カテゴリー: Editor’s Choice 愛書家のための映画

  • ムーヴィーリヴュー:『読書する女』La Lectrice(監督 ミシェル・ドヴィル)

    『読書する女』(原題:La Lectrice)
    監督:ミシェル・ドヴィル
    出演:ミュウ=ミュウ、マリア・カザレス、ピエール・デュクスなど
    1988年
    Amazon Prime Video

    The Reader / La Lectrice(1988)

     読書の持つ力と、言葉の共有の大切さを描いたフランスの作品である。恋人と同棲中で、読書好きのコンスタンスは、『読書する女』という本に夢中になっている。話は、コンスタントが、この本の主人公マリーに同化し進んでいく。マリーは美声を生かし、新聞広告を出して、出張朗読の仕事を始める。顧客についたのは、障害のある少年や、将軍未亡人、離婚歴のある実業家、老判事などだ。やがて、朗読以上のものを求める人たちの生活や人生にかかわることで、マリーと映画自体の主人公のコンスタンスは自身を見つめ直す。作中、モーパッサン、ボードレール、エミール・ゾラ、マルクス、デュラスなどの作品が、コンスタンスとマリー2役のミュウ=ミュウによって読まれる。顧客の1人である幼女のためには『不思議の国のアリス』もだ。ひと昔前のフランス映画と、ジャンルにもよるが、読書が好きな人には、楽しめる内容である。私がこの作品を最初に見たのは、昔の学生の頃だ。時を経て「本は売れない」「テクノロジーの進化により、人々は本を必要としない」などがささやかれる時代になった。というというより、ささやく人たちがいる。それでも、リアル書店、ネット書店、電子書籍や聞く書籍のサブスク、公共図書館、国会図書館などを利用して、本を読む私からすると、本は、一部の、とても多くの人たちに支持されているように感じる。必要に迫られて読んでいる人たちもいるだろうし、読書が生きがいという人たちもいるだろう。書き手と言葉を共有することを欲している人たちは大勢いるのだ。対話のできる朗読者がいることで、顧客も朗読者も、何かしらの考えにいたったり、幸せをつかめそうだったりという話は、夢と希望がある。

  • ムーヴィーリヴュー:『細雪』(監督 島耕二)

    『細雪』
    監督:島耕二
    出演:京マチ子、山本富士子、轟夕起子、叶順子など
    1959年
    Amazon Prime Video

     1959年制作の『細雪』は、関西の、原作では大阪・船場の、没落した商家の姉妹の関係、女性の結婚観などが描かれた作品である。谷崎潤一郎の長編小説をそのまま再現した内容ではない。しかし、その違い探しや、鶴子役の轟夕起子、幸子役の京マチ子、雪子役の山本富士子、妙子役の叶順子のほか、登場人物の洋装や和装、インテリアのチェック、音楽などが楽しめる作品である。また、家柄や社会的なクラスがはっきりしていて、あからさまに人を見下すことが許容された時代であったこと、現代に比べると医療は進化しているということなども、作品を通してわかる。昭和生まれの人なら、その名残をご存じの方が大勢いると思うが、若い方は、この作品を見たら驚くに違いない。昭和生まれの人と共存するために、こうした時代があったということを知るには良い資料になるだろう。私は、学生時代に読んだ原作の方がおもしろいと感じるのだが、ここ数年、京マチ子の作品に凝っており、この大女優が出ている作品を選んだ。

  • ムーヴィーリヴュー:『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(監督 フレデリック・ワイズマン)

    『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(原題:Ex Libris: The New York Public Library)
    監督:フレデリック・ワイズマン
    出演:リチャード・ドーキンス、エルヴィス・コステロ、パティ・スミスなど
    2017年
    Amazon Prime Video

    TRAILER | Ex Libris: The New York Public Library by Frederick Wiseman

     2017年にアメリカで製作された、ニューヨーク公共図書館が舞台のドキュメンタリー作品。同公共図書館は、本館と、4つの研究図書館、88の分館、計92の図書館のネットワークで成り立つ。1911年に本館が竣工し、アンドリュー・カーネギーらの寄付で、分館を増やしたという。図書館は、ある人たちにとっては、古くさい書庫の感覚の場かもしれないが、情報の宝庫であり、言葉から始まる対話や、コンピュータやインターネットに触れる機会は、万人に開かれていることがわかる内容だ。運営陣は、資金集めに苦労しながら、人々に利用してもらえるように努力している。そして、見事に、いろいろな立場の利用者が登場する。人間は「知性」を求めるものだと感じるし、それ自体が、力強く、前向きな生き方だ。同図書館のどこかの建物で、コンサートを鑑賞する、食事会が行われる場面など、日本の、地域の公立図書館や大学図書館、国会図書館を利用する私は驚いた。公立ではなく、公共図書館ということは大きいのかもしれない。尺の長い作品である。1990年代前半の、学生時代に見た黒人指導者をモデルにした映画よりも長かった。それでも、図書館が好きな人間には楽しめる。

  • ムーヴィーリヴュー:『ブックセラーズ』The Booksellers(監督 D.W.ヤング)

    『ブックセラーズ』(原題:The Booksellers)
    監督:D.W.ヤング
    プロデューサー:ダン・ウェクスラー、ジュディス・ミズラヒー、パーカー・ポージー
    出演:デイヴ・バーグマン、ジュディス・ローリー、ナオミ・ハンブルなど
    2019年
    Amazon Prime Video

    The Booksellers | Official Trailer

     2019年にアメリカで公開されたドキュメンタリー映画。ニューヨークの書店業界を舞台に、ブックセラーやコレクターに焦点をあてている。彼らは、古書や希少本を、一点ものの美術品のように扱い、価値を決め、売買する。それはまるで、獲物を狙った「ハンター」のようだ。中年から高齢の関係者が多く、重みのある本を扱うことでの肉体疲労について語る人もいた。若い世代のブックセラーやコレクターも登場する。作家で評論家のフラン・レボウィッツも出演している。彼女が、地下鉄で本を読む人のほとんどが20代の若者であると編集者に話すと、キンドルを読む人は40代と答えたという。老眼も関係しているのではと思ったが、市場が小さくなろうが、紙の本の未来を感じた。あるジャンルの古書コレクターの私は興味深く本作を見た。読書好き、かつ、紙の本をたくさん所有していたい人や、特定の分野の本や、何かの収集家におすすめの作品である。

    映画『ブックセラーズ』予告編