カテゴリー: 平日版

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    ブックリヴュー:『魂の退社 会社を辞めるということ。』(稲垣えみ子 著、東洋経済新報社 刊)

     編集記者として大手新聞社での勤務経験のある著者による、2016年初版の本。50歳で退職するまでの経緯、仕事と会社と人生、節電による家事や日常生活などが、柔らかく、読みやすい文体でつづられている。知的で、センスがよく、素敵な生活をされているなあと、著者の他の本を読むたび、いつも感心するが、久しぶりに読んだ本書(今回は電子版で)でも改めて思った。新聞業界の人たちにエールを送る内容であるとも感じた。私からは次の方々へお勧めしたい一冊だ。何かしらのかたちでの退職を控え、新しいスタートをきる準備をしている、大企業で働く人、公務員の職の人、若い頃から何十年も同じ組織や業界に従事する人などだ。著者は「会社は修業の場であって、依存の場じゃない」という。また、「原稿料というものは天文学的に安い」業界の勤務者は、職種を問わず、ご一読を、と思う。雇用されていた組織を去って、組織に属さず生きる人の言葉の力は大きいのだ。

    ISBN:978-4-492-04594-7
    Cコード:0036
    四六判 212ページ
    定価:1,400円+税
    発行:東洋経済新報社
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    ブックリヴュー:『「自信がない」という価値』(トマス・チャモロ=プリミュージク 著、桜田直美 訳、河出書房新社 刊)

     パーソナリティ分析、人材・組織分析、リーダーシップ開発の権威として知られ、大学教授、組織コンサルタントの社会学者が、2013年にまとめた『CONFIDENCE』の、2023年に出版された邦訳本。人は自身を過大評価しているが、利点などはなく、それをもてはやしすぎると、個人の成長を妨げる。よって実際の能力に見合った適量の自信を持つことが大切で、自らの限界を知ったほうがうまくいくという。データに基づいた言及からは、「謙虚であれ」というメッセージを感じた。私自身は、自信のなさは、心配性だと受け止めている。心配性は悪いことではなく、心理的にも物理的にも準備している場合が多いから、何かあった時に、もしかしたら対処が早いかもしれない。自信がなさそうなことで、それがよくないことだと人から批判を受けたり、本当に、何もかもに自信がない人は、ご一読を。

    ISBN:978-4-309-30031-3
    Cコード:0030
    296ページ
    価格:1,600円+税
    発行:河出書房新社
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    ブックリヴュー:『Fashion in Film 映画衣装とファッションデザイナー』(クリストファー・ラヴァーティ、山田優花 編集、ボーンデジタル 刊)

     映画と映画衣装をまとめた本の邦訳本。衣装とファッションのライターでコンサルタントの著者は、イギリス人のようだ。49以上のブランドやデザイナーと、その衣装や服が使われている映画を紹介している。扱っている映画は、1930年頃から近年の、名作か有名な作品だ。多くの人が、その内容と女優や俳優のファッションを同時に思い出すはずである。本書に目を通していると掲載されている映画をまた見たくなる。また、洋服を買う前に、あれこれ考える時の、よい材料になるだろう写真が多数掲載されている。映画作品の登場人物からファッションセンスを取り入れることは可能なのである。

    ISBN:978-4-86246-563-4
    Cコード:0076
    224ページ
    価格:4,000円+税
    発行:ボーンデジタル
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    ブックリヴュー:『ポートフォリオワーカー: 「副業より複業」で幸せなお金持ちになる方法』(マダム・ホー 著、小学館 刊)

     大阪市出身でアメリカ在住の、25もの職業を持つ著者が、「複数の仕事と投資を通じて、複数の収入源と人脈を持つ」生活を送り、「経済的自由」と「心の自由」を得て、「幸せなポートフォリオワーカー」になることを勧めた本だ。労働収入と不労収入の説明に始まり、本業と副業と投資、時間、心の持ち方、日常生活でのポイントなどが綴られる。著者は、神戸のインターナショナルスクール時代に単身でアメリカに留学、現地の名門大学院を修めた。エリートとして働き始めるが、25歳で介護貧乏になる。これを機に、複数の仕事をするようになったという。「人生100年時代、元祖ポートフォリオワーカーのマダム・ホー」さんには、とても説得力があるのだ。お勤めしている人には、年齢関係なく、特にお勧めしたい。

    ISBN:978-4-09-388717-5
    Cコード:0036
    四六判 208ページ
    定価:1,400円+税
    発行:小学館
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    ブックリヴュー:『人生が確実に幸せになる文房具100』(高畑正幸 著、主婦と生活社 刊)

     少し前に、デジタル、紙、ともに、メモ帳はそれぞれ1点というマイルールを心に刻んだ。近年、何度も試みたが、簡単ではなかった。記録する媒体を持ちすぎなのだ。しかし、忘れてはならないこと、浮かんだアイデアなど、一つにまとめていないと、後で困ることが多いので、今回こそはと、決めた。デジタルは、以前に使っていたメモアプリを復活させた。紙は、かつて、ある媒体の記者をやっていた頃、取材の時だけに使っていた、丈夫なバインダーに挟む、上とじの、ミシン目のついたメモパッドを日常的に使うことにした。筆記具は、書きやすい芯ホルダーを購入した。はるか昔の中高生時代、お小遣で購入して大切に使っていたことを急に思い出したのだ。メモの場がミニマムになり、快適になった。以来、人が使っている文房具が気になって仕方がない。本書は、その流れで手に取った。著者は、文房具の情報サイトの編集長で、ソーシャルメディアでも、文房具の情報を発信し、「文具王」と呼ばれる。「長く使っても古びない普遍性のある」製品をまとめた内容だ。主に日本のメーカーの、筆記具37点、消す用具2点、ノート・メモ帳13点、測る用具2点、切る用具16点、留める用具11点、収納用具5点、電子ツール7点、その他8点を紹介している。機能性と実用性の説明が、とてもわかりやすい。毎日の生活で触れるものを、丁寧に選び、しっかり使い続けていくと、雑事を能動的に取り組むことができ、些細なことでも楽しめるのではないかという、著者の言葉に賛成だ。

    ISBN:978-4-391-16067-3
    Cコード:0076
    A5判 144ページ
    定価:1,800円+税
    発行:主婦と生活社
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    ブックリヴュー:『21世紀の歴史 未来の人類から見た世界』(ジャック・アタリ 著、林昌宏 訳、作品社 刊)

     2008年に邦訳の初版が発売され、話題になった本である。著者は、旧フランス領アルジェリア出身のユダヤ系フランス人の思想家、作家、政治顧問で、欧州を代表する知性の1人と呼ばれる。本書の初読依頼、絶版本から、その時の最新刊まで、著者の翻訳版の多くを読んでいる。著者は、一貫して、歴史から学び、未来を予測する。内容もだいたい同じに感じるが、翻訳者の力も大きく、たいてい、おもしろい。複雑な感情を抱きながらも、ひきこまれてしまう。著作がたくさんある中、読み返すのが本書である。私にとって、初アタリ本、ということもあり、心に響く。そして、考える。「アメリカ帝国」が終焉し、娯楽と保険産業は成長する。「超帝国」が出現し、「超紛争」が起き、「超民主主義」が生まれる。これからの私たちは、どのように準備すればよいか。真の「ノマド」、「クリエーター階級」が、いつも頭にある。それになったり、それに属したりするのは、なかなか難しいが、これも人生と思いつつ、毎日を過ごしている。

    ISBN:978-4-86182-195-0
    Cコード:0033
    四六判 352ページ
    価格:2,400円+税
    発行:作品社
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    ブックリヴュー:『パンティオロジー』(秋山あい 著、集英社インターナショナル 刊)

     アーティストである著者が、パンティとアートと考現学を合わせ、取材、執筆、ドローイングなどを行い、2019年にまとめた本だ。様々な国籍、年齢、職業の女性33人の、3枚のパンティを通して、それぞれの、哲学といってよいような、価値観や人生観を垣間見ることができる。3枚のパンティとは、セクシーなもの、リラックスできるもの、お気に入りのものである。それらは、メーカーやブランドの情報、美しいイラスト、そして、よく取材されたなあと感心してしまうエピソードで説明される。下着が好きな人はもちろん、下着のTPOを勉強したい人に、特におすすめしたい。

    ISBN:978-4-7976-7380-7
    Cコード:0095
    四六判 160ページ
    定価:2,200円+税
    発行:集英社インターナショナル
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    ブックリヴュー:『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(荻野恭子 著、プレジデント社 刊)

     栄養士で料理研究家の著者は、65カ国以上で土地の料理を学び、世界の家庭料理を提案してきた。しかし、自身の母親の阿部ハルさんが103歳で亡くなったのを機に、「母の生活の知恵」を伝えていきたいと考えるようになったという。生前のハルさんの毎日には、リズムのよい時間が流れた。朝は軽い運動からはじまり、身だしなみを整え、美容にも気をつけた。好奇心旺盛な行動をとり、お風呂ではマッサージを行った。食事の前には口の周りの筋肉を鍛える体操を行った。一日の予定を決め、記録した。料理を大切にした。肉や赤ワインが好物だった。人との交流を楽しんだ。「料理をするのがちょっとしんどい」というハルさんが85歳の頃、「卓上クッキング」が始まる。食材、卓上で使える調理器具、うま味の出るものなどを食卓に並べて、座って、調理する。「ポリ袋でモミモミ」なども名案だ。写真の料理は、どれも、とてもおいしそうだ。既に「卓上クッキング」を実践している、長年、料理を大切にしてきたが、台所に立つのがきつくなった高齢者や、自宅でリハビリ中の人などは、共感を覚えるだろう。穏やかに歳を重ねるためのヒントが詰まった一冊である。

    ISBN:978-4-8334-4057-8
    Cコード:0077
    A5判 128ページ
    価格:1,500円+税
    発行:プレジデント社