カテゴリー: Editor’s Choice 既刊書評

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    ブックリヴュー:『家賃は今すぐ下げられる! 家賃崩壊時代にトクする知恵』(日向咲嗣 著、三五館シンンャ/フォレスト出版 刊)

     貧困ジャーナリズム賞を受賞し、職業生活がテーマの著作の多い著者が、家賃交渉術をまとめた2018年初版の本。以前の著書に、実録を加えた改訂新版だ。著者は、3つの行動原則をあげる。「いま住んでいる部屋の家賃の値下げ交渉をしてみる」「更新ごとに、家賃の安い部屋に引っ越しを検討する」「借りるか、買うかにこだわらない」。その上で家賃2万円減を目指す。著者の提案通りの行動をとるには、法律を駆使する準備や、強い精神力が要されそうだ。とはいえ、偏った私見だが、家というものは、借りるにせよ、買うにせよ、もともと、それらが重要なのかもしれない。著者の究極のゴールは「住居費をいまの半額にすること」だという。担当編集者の実体験は参考になる読者も多いだろう。

    ISBN:978-4-86680-901-4
    Cコード:0030
    四六判 200ページ
    定価:1,200円+税
    発行:三五館シンシャ
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    ブックリヴュー:『この父ありて 娘たちの歳月』(梯久美子 著、文藝春秋 刊)

     大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家が、新聞での1年の連載をもとに、書くことが職業だった9人の女性と、それぞれの父親との関係をまとめた、2022年初版の本。父親は、有名だったり、社会的地位の高かったりする人もいれば、市井の人もいる。取り上げているのは、渡辺和子(1927~2016)、齋藤史(1909~2002)、島尾ミホ(1919~2007)、石垣りん(1920~2004)、茨木のり子(1926~2006)、田辺聖子(1928~2019)、辺見じゅん(1939~2011)、萩原葉子(1920~2005)、石牟礼道子(1927~2018)である。娘たちにとっての父親の印象は、時によって変わり、著者によると「自分の人生の中に「父の場所」を作り出したといえる」。書くという行為は重要だったのではないかという。さぞかしご立派なお父上だったのだろうという人がいた。数日ほど、こちらの気持ちがふさいでしまった父親の例もあった。どうしようもないという人もいた。自分と父親との長年の関係も深く考えた。もの書きとなり、その道で成功をおさめた9人の女性たちとその父親を知ることで、読み手は、たくましく生きていこうという気力が湧いてくるだろう。人生訓になることも本書には書かれている。親との関係をよく考える方に、特に、お勧めしたい。

    ISBN:978-4-16-391609-5
    Cコード:0095
    四六判 280ページ
    定価:1,800円+税
    発行:文藝春秋
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    ブックリヴュー:『情報・通信・メディアの歴史を考える』(石橋悠人 編集、石井香江 編集、貴志俊彦 編集、山川出版社 刊)

     情報・通信・メディアの歴史を知り、その役割や可能性を考えることは、現代・未来社会に大切であるという、研究者らがまとめた本。情報通信は、便利な要素がある一方、負の側面もある。また、政治経済や戦争、文化、歴史の転換点を生み出す要因にもなる。歴史を通し、「見えない労働者」と「画像送信」という技術と未来社会はどのように向き合っていくかなどの案もつづられる。通信技術の恩恵を受ける、現代に生きるすべての人が、高校のカリキュラムに加えられた「情報」分野の歴史を、本書のような書籍で勉強できる機会があればよいのに、と常日頃から思っている私である。1人でも多くの人に知ってもらえればと、今回とりあげた。

    ISBN:978-4-634-44523-9
    Cコード:0022
    B6変型判 212ページ
    定価:1,800円+税
    発行:山川出版社
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    ブックリヴュー:『TOKYO STYLE』(都築響一 著、筑摩書房 刊)

     1993年に大判で発表され、その後に文庫化、2003年に出版社が変わって文庫出版された、写真家、編集者で、ジャーナリストの著者による、当時の東京の住宅や、暮らしていた人たちの家の中の写真をまとめた記録集。写真を見ると、その多くは、「物が多い」「散らかっている」「物がむき出しになっている」印象を受ける。1993年といえば、平成5年。昭和の名残が十分あった。コンピュータとインターネットが普及する以前には、スマホもソーシャルメディアもなく、市民のための情報化社会にはまだ突入していなかった。「断捨離」「触ったときに、ときめくか」の片づけ方法の提唱者が登場するのも、まだ先の話である。物に囲まれた、生活感あふれる部屋からは、一生懸命に生きる人々の様子が伝わる。今はどうなのだろう。建物事情が変わり、家を借りる側も買う側も、クローゼットを重要視している。洒落た格安家具も浸透している。時代の流れに沿って物を少なくしたとしても、むき出しにしたくないものは、生活の中に必ずある。それらは、そこに収納する。収集しやすくなった情報や自分が作り出した記録は、コンピュータやスマホの中に格納する。一見すっきりしている。1990年代前半の人々の暮らしは、可視化された現代社会の人々の生活ではないか。名著といわれる本書から、そんなことを感じた。

    ISBN:978-4-480-03809-8
    発行:筑摩書房
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    ブックリヴュー:『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』(アダム・グラント 著、楠木建 監修・訳、三笠書房 刊)

     2021年に出版された、アメリカの組織心理学者による『Think Again』の、22年発売の邦訳本。思い込みや過信から生まれる誤りを理解したり、更新したり、発想を変えたりすることを提案した内容の本である。著者によると、私たちは、牧師、検察官、政治家、これら3つの異なる職業の、自分の信念は絶対的なものであり、考え直すに至らないといった思考法に陥りがちだという。そこで、仮説、実験、結果、検証する、科学の原則に従う考え方を取り入れることを勧めている。次に、自信と謙虚さについてふれ、自分の盲点に盲目になったり、知ったかぶりしたりすることなどに注意を促す。また、他人の心を開いたり、相手の先入観や偏見を説得する技術、対立を恐れずに理性的に反論する方法などに言及する。本書の巻末には「インパクトのための行動」として「再考スキルを磨くための30の秘訣」がまとめてある。総じて、傲慢にも卑屈にもならず、謙虚に強く、考え直すべきということが書かれている。大変難しい技である。世界の力のある人たちは、このような思考法で、交渉や契約、時に征服と支配を繰り返しているのだろうというのが私見だ。学びの多い1冊である。

    ISBN:978-4-8379-5812-3
    Cコード:0030
    四六判 424ページ
    定価:2,000円+税
    発行:三笠書房
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    ブックリヴュー:『武器化する嘘  情報に仕掛けられた罠』(ダニエル・J・レヴィティン 著、パンローリング 刊)

     アメリカやカナダなどで活躍する神経科学者で認知心理学者の著者が、2016年に発表した『A Field Guide to Lies: Critical Thinking with Statistics and the Scientific Method』の邦訳本。誤報、擬似事実、事実や真実の歪曲と、信頼できる情報はどう区別すればよいのかという内容だ。誤解を招く発表、統計やグラフ、報告書などを鵜呑みにせず、常に批判的な目線で吟味することが大切だという。著者の言うことは正しく、私も常日頃から気をつけている。そして、情報の信憑性を決めるのは難しいと感じる。疑うには、何かしらの、とっかかりが必要なのだ。さらに、あらゆる種類の権威、メディアや媒体、広告代理店、通信、コンピュータ、インターネット自体の、歴史や構造なども知らないと、発信者(社)の思う壺とも考える。一方で、情報への疑いが深すぎると、社会で孤立しやすくなるのはたしかだ。これを避けるために、人によっては、フェイクの情報とわかっていても、それを信じることがあるのではないかとも。情報化社会になり、それにすっかり慣れてきたが、何かが違うと少しでも感じている方は、ぜひ本書を読んでみて欲しい。

    ISBN:978-4-77-594179-9
    Cコード:0036
    文庫判 341ページ
    定価:1,800円+税
    発行:パンローリング
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    ブックリヴュー:『生きて行く私』(宇野千代 著、KADOKAWA 刊)

     1996年に98歳で生涯を閉じた、大正から平成にかけて活躍した、作家、編集者、着物デザイナー、実業家の著者が、84歳のときに毎日新聞に連載した自伝的小説。山口県岩国市の生家のことから、作家になった経緯、多くの恋愛や結婚遍歴、経営していた会社の経営と倒産など、波乱万丈、かつ、ひたむきで、底抜けに明るい著者の、それまでの人生が描かれる。行動しなければ、景色は見えず、さらに、成功も失敗もしないということがよくわかる。また、意中の人ができたら、何もかも捨ててすぐさま動いたほうが良いのかもしれない、などまで考えた。お腹を抱えて笑う箇所も多く、これもまた、活動的な著者ならではかもしれない。恋愛、結婚、家族、仕事、お金などの悩みがある方は、女性も、男性も、ご一読を。前向きな気持ちになれる。

    ISBN:978-4-04-108602-5
    Cコード:0193
    文庫判 384ページ
    定価:760円+税
    発行:KADOKAWA
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    ブックリヴュー:『1000万円を貯めた女子100人がやったこと、やめたことリスト』(永田雄三 著、日経BP 刊)

     生命保険会社勤務を経て、5000人以上の女性にお金の学びの場を提供している金融・投資コンサルタントがまとめた本。1000万円の貯金を果たしたり、もう少しで手に届きそうだったりする教え子100人に、「本気で試してみたけど、効果がなかった」ことや、「やってみたら、本当にお金が貯まった」ことなどを調査したという。読者対象は、勤務者、かつ、「男性の人生より複雑な」女性、しかも、若い方のようである。しかし、全く若くなくても、男性でも、独身、既婚関係なく、お金に関する何かで気にすることがあれば、本書は有益だ。お金の勉強の本に書かれている一般的なことが書かれているが、私にとっては、学びがあり、検討中だったことなどを思いだした。著者は「お金」の勉強をすればするほど「お金」が増える」と言及する。肝に銘じよう。

    ISBN:978-4-296-00097-5
    Cコード:
    0033 A5判
    280ページ
    価格:1,600円+税
    発行:日経BP