カテゴリー: Editor’s Choice 既刊書評

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    ブックリヴュー:『ドイツの女性はヒールを履かない 無理しない、ストレスから自由になる生き方』(サンドラ・ヘフェリン 著、自由国民社 刊)

     ドイツ・ミュンヘン出身のエッセイストが「心地よい生活」を送る方法を提案した本。ドイツ人の父と日本人の母をもち、日独両方が母国語の著者は、23歳までをドイツで過ごし、日本には25年在住である。本書では、ドイツ人が、散歩を大切にし、そのために靴選びを慎重に行う話から、著者の日本での運動法や住居選びのポイント、両国の日常生活へのお金をかけ方の違い、結婚や年齢への価値観、時間の使い方、睡眠、進路と職業、人付き合い、恋愛まで幅広く取り扱う。たまたまドイツとドイツ人に縁がある私は、納得しながら読んだ。女性たちがヒールを履かないことも含め、色々な社会と経済階層の人たちに共通する行動や生活観、人生観と全く同じなのである。お国柄なのだ。読者の中でドイツと無縁な人がいたら、本書で書かれていることが「ドイツ人は質素で地味すぎるのではないか」「ドイツ人はなぜお金を使わないのか」と感じるかもしれない。しかし、その質素で地味でお金を使わない生活は、十分な睡眠、歩行による運動、ハムやチーズやパンなどタンパク質たっぷりの調理や後片付けに時間をかけない食事、仕事とは関係ない友達と恋愛対象がいる、というものだ。無理なくストレスの生活を目指している場合、ヒントや発見が必ずあるだろう1冊である。著者が勧めるレストランは、星を5つ送りたい。

    ISBN:978-4-426-12899-9
    Cコード:0095
    四六判 224ページ
    定価:1,500円+税
    発行:自由国民社
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    ブックリヴュー:『一九八四年〔新訳版〕』(ジョージ・オーウェル 著、高橋和久 訳、早川書房 刊)

     1949年に刊行された、イギリスの作家、ジョージ・オーウェル(1903~50)のディストピア小説『Nineteen Eighty-Four』の邦訳本。全体主義の監視社会を描いている。「舞台は、1984年。世界は、オセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国が分割統治している。オセアニアで暮らす主人公のウィンストン・スミスは、真理省記録局で働く党員で、歴史の改ざんが仕事である。独裁者の党首ビッグ・ブラザーが、絶え間ない監視、プロパガンダ、歴史操作を通じて完全服従を強いる中、自由と真実に憧れるウィンストンは、反逆者のジュリアと禁断の恋に落ちる。2人は党を打倒する動きをとるが、鎮圧され、最終的には、ウィンストンは現実を受け入れる」。以上が、だいぶ前に新訳を読んだ私の本書の要約である。力ずくの統制下の世界での、他人からの裏切り、拷問、洗脳など、苦しくなる場面が多いが、読了後は、「読んでよかった」「なぜ、子どもの頃か、若いうちに読まなかったのか」という感想を持った。未読の方はぜひどうぞ。

    ISBN:978-4-15-120053-3
    511ページ
    発行:早川書房
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    ブックリヴュー:『銀座 六雁 野菜料理のすべて』(榎園豊治 著、世界文化社 刊)

     野菜中心のコース料理に定評がある、銀座の日本料理店の初代料理長が、野菜だけを使った423品の料理と調理法を紹介した本。春夏秋冬の旬の野菜を「煮る」「焼く」「揚げる」、「ご飯と麺」や「汁もの」、「甘味」など、家庭で作るからこそ、おいしく作れる方法を披露している。材料、盛り付け、器、著者の選ぶ言葉は、読者それぞれの毎日の料理や食事が、より良いものになるようなヒントを与えてくれる内容である。著者が料理の心を学んだという尼僧の逸話と、その章の料理にはとりわけ感動した。

    ISBN:978-4-418-23306-9
    Cコード:2077
    B5変型判 424ページ
    定価:5,000円+税
    発行:世界文化社
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    ブックリヴュー:『弘兼流 60歳からの楽々男メシ』(弘兼憲史 著、マガジンハウス 刊)

     団塊世代の、キャリアのある漫画家がまとめた料理と食についてのエッセイ。2017年初版。著者の日常生活には、プロダクションでのまかない、人が集まったときなど、料理が組み込まれている。男性であり、大御所の漫画家の先生である。そんな著者が提案する60歳からの料理のルールは4つ。「ラクに楽しむこと。」「健康的な料理を作るということ。」「材料を無駄にせず、時短で作る。」「料理はエンターテインメント。」だ。本書では、このルールに沿った、ポピュラーな家庭料理、市販のものを活用した料理、食通でワイン好きだからこそのアイデア料理、調理の基本などにふれる。料理には「仕事のレベルを高めるために必要な要素がすべて入っている」ので、若いビジネスマンにも、長年の仕事で「企画力」や「予算管理とコスト追求」、「美的センスや進行プラン」が培われている60歳にも良いという。料理に慣れてくれば効率よくできるようになるとのこと。うまくいきますようにという気持ちと、私見では、定年退職後に何もやることがない家族と同居の人の場合、練習も兼ねて料理を趣味で始め、慣れてきたら、そのお宅の台所を長年司っている人たちにお願いし、買い物から調理、後片付けまでの作業をやらせてもらうのがよいと考える。「台所に夫(または父)が立たれるとちょっと」と思う妻や娘は大勢いる。生活の要になる水場の主は強いのだ。本書は、60を迎えるだいぶ前に読まれることをお勧めしたい。

    ISBN:978-4-8387-2935-7
    Cコード:0095
    B6変型判 216ページ
    定価:1,000円+税
    発行:マガジンハウス
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    ブックリヴュー:『WORLD WITHOUT WORK AI時代の新「大きな政府」論』(ダニエル・サスキンド 著、上原裕美子 訳、みすず書房 刊)

     イギリスの経済学者が、テクノロジーが形作る、仕事の未来を考察した本。著者の懸念は「テクノロジー企業の経済的支配力ではなく――経済的支配が甚大かつ拡大しているのは事実であるとしても――むしろ彼らの政治的支配力だ」。テクノロジーが、人間のかわりに仕事をする日が到来すると、人間は人生の新しい意味を探し求めるのだろう。国家はどのような準備をする必要があるのか。政治、大企業、教育などのあり方も考えさせられる。とはいえ、市民は溺れない波に乗るのみ、というのが私見だ。その波に乗るための健康と体力と気力の維持のための生活収入を得るため、今を生きるしかないのである。

    ISBN:978-4-622-09070-0
    Cコード:0033
    四六判 400ページ
    定価:4,200円+税
    発行:みすず書房
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    ブックリヴュー:『90歳まで働く 超長生き時代の理想の働き方とは?』(田原総一朗 著、クロスメディア・パブリッシング/インプレス 刊)

     1934年(昭和9年)生まれの現役ジャーナリストが、半生を振り返りながら、仕事を続ける体力や気力、知力の秘密、人生100年時代の働き方の手がかりを探った本。初版は2020年。著者は、サラリーマンの大切な資産は、好奇心、教養、人脈、目標の4つという。これらを「60歳で使い切るものと思わずに、生涯も存分に活かせるよう、会社にいるときから常に磨き続けることではないでしょうか」。小説家志望を変更した大学夜間部時代。映画の世界から、ジャーナリストの道へ。40代にはサラリーマンからフリーランスへ。本書の初版当時、86歳で仕事を続けている著者は、企画と制作、報じることを、常に身体を張ってやってきた。デジタルの時代になっても、働く人、特に、報じたり、発表、発信、発行してお金を得ている人たちのお手本になるような人ではないか。本書を読むまで、著者を団塊の世代だと思っていた。働き続けるとは、若々しさを保つことでもあるのだ。田中角栄や笹川良一から取材後にお札の入った封筒を渡されるが、それを返したというエピソードはとてもおもしろかった。

    ISBN:978-4-295-40434-7
    Cコード:2034
    B6変型判 256ページ
    定価:1,380円+税
    発行:クロスメディア・パブリッシング
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    ブックリヴュー:『狭い家でも「ゆとりある暮らし」は仕組みが9割 55㎡賃貸に家族6人。ホント、狭い!でも、快適!』(みくろママ 著、三笠書房 刊)

     整理収納アドバイザーの著者が、賃貸55㎡の3DKで、夫婦と高校生から小学生までの三男一女の6人家族で、快適に暮らす方法をまとめた本。ポイントは「ムダな家事、ムダな動きを省く。優先順位をつけて、24時間の使い方を工夫する」。著者一家は、フリーデスク、ファミリークローゼットを設置し「24時間フル稼働」させ、物を増やさない定数化のルールを決め、「おうちポスト」と「一時置きボックス」を作って、6人分の書類を管理するなど、ロジカルな家事を実践しているという。スマートでクリエイティヴな生活をされているご家族という印象である。1人暮らしでも、2人暮らしでも、多くの人が、このお宅の方法を参考にできるのではないか。書類の管理については、色々な仕事をやったり、年齢を重ねたりすると、種類や量が増えていくので、ヒントをもらった。

    ISBN:978-4-8379-2845-4
    Cコード:0077
    四六判 176ページ
    定価:1,300円+税
    発行:三笠書房
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    ブックリヴュー:『思い出トランプ』(向田邦子 著、新潮社 刊)

     40年以上前に刊行された、脚本家、随筆家、小説家の向田邦子(1929~81)の「かわうそ」「マンハッタン」「酸っぱい家族」「ダウト」など13作を収録した短編集。各作品で、人間の狡さや醜さ、汚さ、後ろめたさ、愚かさなどが描かれる。それらは、日常生活の些末なことと調和し、人間の曖昧さや矛盾さえもが愛おしいものとして捉えることができる。10年に1度くらい本作を読む。前回以上に自分の弱さを知り、人にも寛容になっている分、違った景色を感じた。0か1かの世の中に疲れを感じている方は、本作、及び、向田作品を、ぜひお読みください。

    ISBN:978-4-10-129402-5
    Cコード:0193
    文庫判 256ページ
    定価:550円+税
    発行:新潮社