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ブックリヴュー:『この父ありて 娘たちの歳月』(梯久美子 著、文藝春秋 刊)

 大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家が、新聞での1年の連載をもとに、書くことが職業だった9人の女性と、それぞれの父親との関係をまとめた、2022年初版の本。父親は、有名だったり、社会的地位の高かったりする人もいれば、市井の人もいる。取り上げているのは、渡辺和子(1927~2016)、齋藤史(1909~2002)、島尾ミホ(1919~2007)、石垣りん(1920~2004)、茨木のり子(1926~2006)、田辺聖子(1928~2019)、辺見じゅん(1939~2011)、萩原葉子(1920~2005)、石牟礼道子(1927~2018)である。娘たちにとっての父親の印象は、時によって変わり、著者によると「自分の人生の中に「父の場所」を作り出したといえる」。書くという行為は重要だったのではないかという。さぞかしご立派なお父上だったのだろうという人がいた。数日ほど、こちらの気持ちがふさいでしまった父親の例もあった。どうしようもないという人もいた。自分と父親との長年の関係も深く考えた。もの書きとなり、その道で成功をおさめた9人の女性たちとその父親を知ることで、読み手は、たくましく生きていこうという気力が湧いてくるだろう。人生訓になることも本書には書かれている。親との関係をよく考える方に、特に、お勧めしたい。

ISBN:978-4-16-391609-5
Cコード:0095
四六判 280ページ
定価:1,800円+税
発行:文藝春秋