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ブックリヴュー:『見えない人間』(ラルフ・エリスン 著、松本昇 訳、白水社 刊)

アメリカの作家、ラルフ・エリスン(1914~94)による、52年刊の小説『Invisible Man』の邦訳本。地下生活を送る主人公の青年の「僕」が、地下生活にいたるまでの過去を回想し、物語が進む。「僕」は、奨学金で入学した大学を退学になったり、働いていた塗料工場で事故にあったり、政治団体に参加したりなど、様々な経験をする。そこには、常に人種差別が存在し、トラブルが続く。著者も「僕」もアフリカ系の人である。そして題名の「見えない人間」とは、当時のアメリカの白人社会における黒人だ。「僕」は白人社会と黒人コミュニティ内でのアイデンティティを模索する。そして「見えない人間だって、社会的な責任として果たす役割があるかもしれないのだから」とエピローグで語る。しかし、本書の最後の一文は「君たちに代わって声を落として語っているのに、そのことに誰も気づいてくれない」。はるか昔の学生時代に、原書、及び、古本屋で購入した、58年刊の故橋本福夫さんの13章まで訳されたものを読んだ。松本昇さん版は初読である。現代的で読みやすい。


ISBN:978-4-560-07231-8
Cコード:0297
新書判 420ページ
定価:2,400円+税
発行:白水社


ISBN:978-4-560-07232-5
Cコード:0297
新書判
396ページ
定価:2,300円+税
発行:白水社