カテゴリー: Editor’s Choice 既刊書評

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    ブックリヴュー:『記者のためのオープンデータ活用ハンドブック』(熊田安伸 著、新聞通信調査会 刊)

    ジャーナリストがまとめた、国や自治体の事業、公益的な法人、民間企業、不動産、個人、乗り物や事故、サイト、政治と資金などを調べるためのテクニックの本。オープンなデータで、極力費用をかけず、素早く情報収集するための方法が書かれている。調査報道に必要なアンケートや、OSINT(Open Source Intelligence)についてもつづられる。歴史ある媒体の記者やデスク、もしくは、フリージャーナリスト向けの本だと感じた。しかし、その手の職業でなくても、人は、生きていれば、まるで学生時代のように、何かについてリサーチしなければならない時期や場面に遭遇する。本書を何度か読んでおけば、万が一の時の備えになるのではないか。本体価格は700円。「一家に1冊」の本である。

    ISBN:978-4-907087-24-1
    Cコード:3000
    四六 237ページ
    価格:700円+税
    発行:新聞通信調査会
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    ブックリヴュー:『考えの整頓』(佐藤雅彦 著、暮しの手帖社 刊)

     クリエイティブディレクターで映像作家の著者による、日常の不可解さを独自の分析で考察した27篇を収録した、2011年初版の本。もっと早く出合いたかった1冊だ。ふんわりとした文体だが論理的、そして、細やかな着眼点が非常におもしろい。エッセイに慣れた人で、思考を整理する方法や、問題解決能力、創造性、コミュニケーション力の向上を強化したい人にお勧め。

    ISBN:978-4-7660-0171-6
    283ページ
    発行:暮しの手帖社
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    ブックリヴュー:『紙の動物園』(ケン・リュウ 著、古沢嘉通 訳、早川書房 刊)

     11歳で中国甘粛(かんしゅく)省からアメリカに移住し、弁護士やプログラマーの顔も持つSF作家の作品。2015年の短編集『The Paper Menagerie and Other Stories』の邦訳単行本『紙の動物園』から7篇を収録した短編集で、本投稿では、同タイトル「紙の動物園」を扱う。舞台は、米国のコネチカット。主人公の「ぼく」であるジャックは、白人の父親と中国人の母親が両親である。カタログに掲載された「英語堪能で香港出身」の嘘のふれこみの母親を父親が買い、アメリカに呼び寄せ、誕生する。幼いジャックは、母親が作った折り紙の動物たちに癒され。しかし、成長するにつれ、アメリカ文化に同化しなければならないというプレッシャーを感じ、自分の伝統や母親から距離を置くようになる。大学生の時に、母親は病死するが、彼に遺した手紙で、ジャックは自分のルーツでもある彼女の生い立ち、そして我が母の、孤独と孤立を知ることになる。以上が物語の要約であるが、なんとも哀しい話だ。道を切り拓くとは、重い苦しみが付きまとい、さらに、家族ですら自分のことを理解しないのが人生なのだ。この世とアメリカは白人社会であり、彼らと彼らが作り上げた価値観によって、東洋人、ここでは中国人差別が存在する現実も、よく伝わった。自身を東洋人と思わず「白人」と思い込んでいる日本人の男性に頻繁に遭遇するが、そういう人以外に、本書はお勧めである。

    ISBN:978-4-15-012121-1
    Cコード:0197
    文庫判 272ページ
    定価:680円+税
    発行:早川書房
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    ブックリヴュー:『混ぜるだけサラダとさっと煮るだけスープ』(河井美歩 著、主婦と生活社 刊)

     料理教室を主宰している著者がまとめた野菜料理の本。葉茎菜(ようけいさい)、果菜(かさい)、根菜、キノコ、豆などを使った約150種類のレシピの紹介をする。気軽な素材を使った調理方法と写真に圧倒される本だ。私が最も感動したのは、「水菜と塩昆布の即席スープ」である。細かく切った水菜、塩昆布、塩を器に入れて、熱湯を注ぐだけのものだが、目から鱗の発想だ。塩昆布は常備していないのだが、水菜は週の何日かは冷蔵庫に入っていることが多いので、普通の昆布を使って応用したい。本書に触れた人は、毎日の生活取り入れられるアイデアをもらえるはずなので、料理をする人は、ご一読を。

    ISBN:978-4-391-15451-1
    Cコード:0077
    A5判 128ページ
    定価:1,350円+税
    発行:主婦と生活社
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    ブックリヴュー:『エッセイストのように生きる』(松浦弥太郎 著、光文社 刊)

     エッセイストの著者による、考え方や書き方、読書、SNSとの付き合い方まで、思考のレッスンをまとめた本。著者は、エッセイを「パーソナルな心の様子を描いた文章」と捉え、書くことによって「自分はどんな人間になりたいか」に注力することを勧める。著者の本は、『本業失格』の刊行以降、女だてらに「松浦さんのような生活ができたら」と思いながら、ほぼ全作読んでいる。気づきも多い。むつかしい言葉を使わず、子どもからお年寄りの誰が読んでも、わかりやすく書かれていることも、人気のエッセイストであり続ける秘訣と感服する。そして、本作は大変刺激になった。効率重視の世の中で、「なにかになるための生き方」はしないのが得策かと。心の小さな動きを感じ、それを書き続けることが大切なのである。

    ISBN:978-4-334-10098-8
    Cコード:0095
    四六変型判 232ページ
    定価:1,600円+税
    発行:光文社
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    ブックリヴュー:『孤独の本質 つながりの力』(ヴィヴェック・H・マーシー 著、樋口武志 訳)

     アメリカの医学博士で、第19、21代アメリカ公衆衛生局長官を務めた著者による、2020年刊行の『Together: The Healing Power of Human Connection in a Sometimes Lonely World』の邦訳本。人とのつながりの大切さ、孤独が健康に及ぼす影響、コミュニティの重要性などに触れている。また、毎日大切な人たちと過ごす、相手に全神経を集中させる、孤独を受け入れる、助け、助けられる、これら4つは互いを守るための方法だという。私見では、孤独に対するアメリカらしい見解という印象が。孤独をネガティヴなものと捉えている人には、安心できる内容の本。

    ISBN:978-4-86276-298-6
    Cコード:0030
    四六判 440ページ
    定価:2,400円+税
    発行:英治出版
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    ブックリヴュー:『母 老いに負けなかった人生』(高野悦子 著、岩波書店 刊)

     映画評論家で、東京・神保町にあった岩波ホールの支配人高野悦子(1929~2013)さんが、96歳で亡くなった明治生まれの母・柳さんとの思い出をつづったエッセイ。初版は2000年。著者は、父の急死後11年余、柳さんを介護し、認知症から奇跡的に救い出した。この話を軸に、柳さんの自立した精神と波乱万丈の人生、映画に励まされながら介護に奮闘した日々、柳さんが叶えられなかった夢を自らの夢として歩みつづける著者の半生をふり返る。自分に命があり、介護や介助される身体ではない限り、間もなく訪れるだろう親の介護についてを考える内容だった。今で言う「認知症」を、ひと昔まで一般的だった「痴呆症」や「ボケ」と表現されているので、余計に現実的でもあった。自分が生きて健康ならば、親の介護は自宅でとも思った次第である。

    ISBN:978-4-00-602214-3
    価格:980円+税
    287ページ Cコード:0195
    発行:岩波書店
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    ブックリヴュー:『魔術師が贈る55のメッセージ』(パンローリング 著 刊)

     トップトレーダーたちの「座右の銘」をまとめた本。本書に数多く出てくる「トレード」や「トレーダー」を、「仕事」「人生」に置きかえて読むと、励みになるという。本来は、マーケットの土俵に立つ人々が読む本なのかもしれないが、人間はどんな場面でも、感情をコントロールし、謙虚に、一生懸命に生きることが大切だと思わずにいられなくなる。

    ISBN:978-4-77-5980019-9
    Cコード:0036 B6判
    72ページ
    定価:1000円+税
    発行:パンローリング