Cコード:0122
文庫判 256ページ
定価:1,100円+税
発行:早川書房
2023年12月6日にスタートした、本の紹介ブログサイト「16 pages(16ページ)」です。平日の午前に、公開日前後に発売の書籍や雑誌などの情報を掲載します。24年4月1日から「Editor’s Choice 既刊書評」「Editor’s Choice 愛書家のための映画」が不定期掲載になりました。※5月3日~6日は休載しました。
『グータラ小説家』(原題:Book Week)
監督:ヒース・デイヴィス
出演:アラン・デュークス、スーザン・プライアー、エアリー・ドッズなど
2018年
Amazon Prime Video
オーストラリアの映画で、原題は『Book Week』。主人公のニックは、高校で英語教師の職に就き、1作だけが世に出ている小説家。破天荒な性分の独身の中年だが、職場に恋人はいるし、父親とは不仲だが、妹との関係は良好、教育者としても悪くない。本の催しが行われるブックウィークと、出版社側から2作目の刊行の条件を課された時期が重なり、そこで繰り広げられる話が描かれている。タイムパフォーマンスこそに価値があると声高に叫ぶ人が多い中、本作を評価する人は多くないと思う。合理主義者は芸術が無駄から生まれることを知らない。しかし、日々の糧を得ることと、自身の何かしら表現活動を同等に考えている人は、心打たれることだろう。もちろん本が好きな人も。ところで、本作には出版社の人間が出てくる。雰囲気が、小説や映画やドラマで描かれる、昔のアメリカの奴隷商人や日本の女衒(せげん)のようだった。プロの仕入れを職業とする人の顔をしていた。もし、この映画を見る機会があったら、着目してみて欲しい。
著者が19歳の時に、2003年下半期芥川賞を受賞した作品。事前の情報はこのくらいで、読み進めた。周囲に溶け込めない主人公の初実ハツが、同級生の男子、にな川と心を通わせる話である。自分の高校時代は、暗い思い出ばかりだから、この年代の話は、構えてしまうのだが、過去の記憶が良いものに変わりそうなくらい、爽やかな印象の残る青春小説だった。「さびしさは鳴る」の冒頭も良かった。読了後、この書き出しが評価の高いものであることを知った。名作に触れられ、大変満足。