ムーヴィーリヴュー:『グータラ小説家』Book Week(監督 ヒース・デイヴィス)

『グータラ小説家』(原題:Book Week)
監督:ヒース・デイヴィス
出演:アラン・デュークス、スーザン・プライアー、エアリー・ドッズなど
2018年
Amazon Prime Video

 オーストラリアの映画で、原題は『Book Week』。主人公のニックは、高校で英語教師の職に就き、1作だけが世に出ている小説家。破天荒な性分の独身の中年だが、職場に恋人はいるし、父親とは不仲だが、妹との関係は良好、教育者としても悪くない。本の催しが行われるブックウィークと、出版社側から2作目の刊行の条件を課された時期が重なり、そこで繰り広げられる話が描かれている。タイムパフォーマンスこそに価値があると声高に叫ぶ人が多い中、本作を評価する人は多くないと思う。合理主義者は芸術が無駄から生まれることを知らない。しかし、日々の糧を得ることと、自身の何かしら表現活動を同等に考えている人は、心打たれることだろう。もちろん本が好きな人も。ところで、本作には出版社の人間が出てくる。雰囲気が、小説や映画やドラマで描かれる、昔のアメリカの奴隷商人や日本の女衒(せげん)のようだった。プロの仕入れを職業とする人の顔をしていた。もし、この映画を見る機会があったら、着目してみて欲しい。