Cコード:0095
四六判 192ページ
定価:1,450円+税
発行:青春出版社
子どもの頃に読んだ、バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』の表紙に似ている本という印象のまま、読む機会を逃していた小説である。映画も、その宣伝も、ポスターを見たくらいだった。昭和初期、開戦前から戦中、東京の平井家で奉公していた山形出身のタキが、大甥の健史に託すかたちで、当時を回想する話だ。仕えていた奥様の主人と何か起きるのだろうかなどを考えて読んでいたが、それは違っていた。奥様とその子息を大切にし、仕事をしっかりやる女性の姿が描かれていた。さらに、戦争が始まる前の、良い時代の東京の様子もよくわかった。タキの死後、健史は大伯母が過去に置いてきたあるものの謎を説く。真っ新な状態で読んでいる私にとっては、急に、推理小説を読んでいる感覚に陥る展開だった。そこには、幾多の重なり合う物語があった。素晴らしい構成の小説だった。最後に。バートンの『ちいさいおうち』と本作の表紙の絵は全く違っていた。人は知っているものに引っ張られるものらしい。
『マイ・ブックショップ』(原題:The Bookshop)
監督:イザベル・コイシェ
出演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソンなど
2017年
Amazon Prime Video
イギリスの作家、ペネロピ・フィッツジェラルド(1916~2000)が1978年に発表した小説が原作。1950年代後半の同国東部の海辺の町が舞台で、主人公の未亡人が書店を開業してから閉店までの物語である。本と書店が好きな人が共感することが多い内容であると同時に、権力者は狙った獲物を、正しいかたち、例えば法律を変え、その法律に従って自分のものにできること、庶民は権力者側につきやすいこと、情熱あふれる行動は次世代が必ず見ていることなどもわかる作品だ。作中、BBC職員の役柄の男性が出てくる。原作者は、戦争中BBCで勤務、その後は、文芸雑誌の編集、書店経営などをやっていたそうで、この作品には、彼女の経験がいきているのであろう。主人公のフローレンス・グリーンを演じる主役のエミリー・モーティマーは、切なくはかなげな表現がうまい女優であった。