Cコード:3011
A5判 332ページ
定価:3,800円+税
発行:誠信書房
渡辺淳一(1933-2014)の1973年の小説。自身の類まれな才能に苦悩し、男性たちとの関係に葛藤しながら、阿寒湖畔で自ら命を絶った17歳の天才少女画家時任純子と、彼女に翻弄された、作家、画家、記者、医師、カメラマン、5人の男性の姿を描いた話である。数年前に、加清純子という時任純子のモデルになった画家をたまたま知り、興味がわいて、本作を読んだ。それ以前、渡辺淳一作品のいくつかに触れたが、ある種のイメージができあがっていた。女流作家の作品が好きな私としては、受け入れられないものだった。しかし、デビューして数年後に書かれた本作によって、作者のスタイルを理解し、すっかりファンに。傑作。
『読まれなかった小説』(原題:Ahlat Ağacı(The Wild Pear Tree))
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:アイドゥン・ドウ・デミルコル、ムラト・ジェムジル、ベンヌ・ユルドゥルムラーなど
2018年
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トルコ北西部のマルマラ地方が舞台の、作家志望の若者の物語である。3時間以上の長編作品。最初に、おおまかな内容を。大学を卒業し、故郷の田舎町に帰ってきたシナンは、本の出版のため、地元で資金集めに臨む。しかし人々は無関心だ。さらに、引退間近の教師の父親は、ギャンブルにはまり、家族は悲惨な生活を送っている。周囲とのつながりに苦悩する中、彼は、父親の愛犬を売り、出版資金にあてた。その後のしばらくの間の兵役から戻ると、家族は、父親の退職金で家族は普通の暮らしができるようになったものの、本の在庫にはカビが生えていた。さらには、書店においてもらった本は5カ月の間1冊も売れていないという燦燦たる状況。映画の終盤は、祖父と暮らすようになっていた父親に会いに行ったシナンの姿が描かれる。このような話で、見ている間、なじみのないトルコ語、あまりに田舎が舞台ということもあり、陰鬱な気分に陥る。しかし、最後の最後で、希望の光がさす。ああよかったと。どんな親でも親は親、親は子どもへの愛があると信じたくなるのだ。近くにいるのに、しばらく会っていない親が恋しくなった。