Cコード:0022
四六判 362ページ
定価:6,300円+税
発行:白水社
2023年12月6日にスタートした、本の紹介ブログサイト「16 pages(16ページ)」です。平日の午前は、公開日前後に発売の書籍や雑誌などの情報を、午後は、生活や仕事に役立つ本の書評を公開します。土曜日と国民の祝日・休日は、出版社、書店、図書館などが舞台、または、本の仕事に就く人の物語や、小説が原作の映画の紹介を、日曜日は、文学やアートの本の書評を掲載します。一部のテキストや画像には、Amazonのアフィリエイトリンクが含まれます。1人の管理人が、サイトの制作・運営、本や映画作品の選定、記事作成、編集を行っています。※24年4月1日から、「Editor’s Choice 既刊書評」「Editor’s Choice 愛書家のための映画」が不定期掲載になります。
1949年に刊行された、イギリスの作家、ジョージ・オーウェル(1903~50)のディストピア小説『Nineteen Eighty-Four』の邦訳本。全体主義の監視社会を描いている。「舞台は、1984年。世界は、オセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国が分割統治している。オセアニアで暮らす主人公のウィンストン・スミスは、真理省記録局で働く党員で、歴史の改ざんが仕事である。独裁者の党首ビッグ・ブラザーが、絶え間ない監視、プロパガンダ、歴史操作を通じて完全服従を強いる中、自由と真実に憧れるウィンストンは、反逆者のジュリアと禁断の恋に落ちる。2人は党を打倒する動きをとるが、鎮圧され、最終的には、ウィンストンは現実を受け入れる」。以上が、だいぶ前に新訳を読んだ私の本書の要約である。力ずくの統制下の世界での、他人からの裏切り、拷問、洗脳など、苦しくなる場面が多いが、読了後は、「読んでよかった」「なぜ、子どもの頃か、若いうちに読まなかったのか」という感想を持った。未読の方はぜひどうぞ。
『アメリカン・フィクション』(原題:American Fiction)
監督:コード・ジェファーソン
出演:ジェフリー・ライト、トレイシー・エリス・ロス、スターリング・K・ブラウン、レスリー・アガムズ、エリカ・アレクサンダー、イッサ・レイなど
2023年
Amazon Prime Video
アメリカの作家、パーシヴァル・エヴェレットの2001年の小説『Erasure』が原作の映画。主人公のモンクは、博士号を持つ大学教員で、売れない小説家である。姉と兄と他界した父親は医師、実家は別荘も持ち、家政婦がいる社会的クラスだ。物語は、彼が、講義中に人種差別用語を使ったことが原因で、大学から休職を命じられ、ブックフェアに参加し、実家に帰るところから始まる。ブックフェアでは、黒人のステレオタイプを迎合した小説で人気の、エリートコースを歩んできた黒人女流作家を知る。姉に任せたきりの、実家の母親は、アルツハイマーの兆候が出ていることがわかった。これからどうするかという時に、その姉が急死。母親は施設に入れる体調になっていくが、兄もモンクも、エリートにも関わらず、お金がない。そこで、介護費用の工面と、その女流作家の成功への複雑な思いから、ペンネームを使い、白人社会が喜ぶ経歴を作り上げ、さらに彼らがイメージする黒人像を描いた小説を書き上げる。原稿は、エージェント経由で出版社に売り込まれ、モンクは、ある出版社から桁外れの高額なアドヴァンス料を得た。母親の介護費の問題は解決する。ペンネームを使った小説は、映画化も決まり、ベストセラーにもなり、文学賞も受賞。しかしその文学賞は、「博士号を持つ大学教員で、売れない小説家」のモンクが選考委員だ。授賞式では、自分がその作家であると告白しようとする。ここからタイトルの「フィクション」がぴったりの展開に急に変わり、映画は終わる。原作は邦訳版が現状出ていないようだが、元の小説も読みたくなるほど、おもしろい作品だった。また、中年ならではの「こういう話をよく聞く」ということが描かれていた。例えば、きょうだいに任せっぱなしで、忙しいを理由に実家に寄り付かず、たまにしか顔を見せない子どもは、老いた親や実家のことを全くわかっていないとか、高学歴かつ有名大卒で、一見、経済的クラスが高い職業に就いていても、人生いろいろで、お金がない中年の現実とか、中年になったからこその、きょうだい間の、子どもの頃からの妬み恨みが勃発するが、それでも、きょうだいのことが心配で愛しいとか。人種問題や親のアルツハイマーや介護など、テーマは重いが、コメディ映画である。
野菜中心のコース料理に定評がある、銀座の日本料理店の初代料理長が、野菜だけを使った423品の料理と調理法を紹介した本。春夏秋冬の旬の野菜を「煮る」「焼く」「揚げる」、「ご飯と麺」や「汁もの」、「甘味」など、家庭で作るからこそ、おいしく作れる方法を披露している。材料、盛り付け、器、著者の選ぶ言葉は、読者それぞれの毎日の料理や食事が、より良いものになるようなヒントを与えてくれる内容である。著者が料理の心を学んだという尼僧の逸話と、その章の料理にはとりわけ感動した。