,

ブックリヴュー:『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』(アダム・グラント 著、楠木建 監修・訳、三笠書房 刊)

 2021年に出版された、アメリカの組織心理学者による『Think Again』の、22年発売の邦訳本。思い込みや過信から生まれる誤りを理解したり、更新したり、発想を変えたりすることを提案した内容の本である。著者によると、私たちは、牧師、検察官、政治家、これら3つの異なる職業の、自分の信念は絶対的なものであり、考え直すに至らないといった思考法に陥りがちだという。そこで、仮説、実験、結果、検証する、科学の原則に従う考え方を取り入れることを勧めている。次に、自信と謙虚さについてふれ、自分の盲点に盲目になったり、知ったかぶりしたりすることなどに注意を促す。また、他人の心を開いたり、相手の先入観や偏見を説得する技術、対立を恐れずに理性的に反論する方法などに言及する。本書の巻末には「インパクトのための行動」として「再考スキルを磨くための30の秘訣」がまとめてある。総じて、傲慢にも卑屈にもならず、謙虚に強く、考え直すべきということが書かれている。大変難しい技である。世界の力のある人たちは、このような思考法で、交渉や契約、時に征服と支配を繰り返しているのだろうというのが私見だ。学びの多い1冊である。

ISBN:978-4-8379-5812-3
Cコード:0030
四六判 424ページ
定価:2,000円+税
発行:三笠書房