『アメリカン・フィクション』(原題:American Fiction)
監督:コード・ジェファーソン
出演:ジェフリー・ライト、トレイシー・エリス・ロス、スターリング・K・ブラウン、レスリー・アガムズ、エリカ・アレクサンダー、イッサ・レイなど
2023年
Amazon Prime Video
アメリカの作家、パーシヴァル・エヴェレットの2001年の小説『Erasure』が原作の映画。主人公のモンクは、博士号を持つ大学教員で、売れない小説家である。姉と兄と他界した父親は医師、実家は別荘も持ち、家政婦がいる社会的クラスだ。物語は、彼が、講義中に人種差別用語を使ったことが原因で、大学から休職を命じられ、ブックフェアに参加し、実家に帰るところから始まる。ブックフェアでは、黒人のステレオタイプを迎合した小説で人気の、エリートコースを歩んできた黒人女流作家を知る。姉に任せたきりの、実家の母親は、アルツハイマーの兆候が出ていることがわかった。これからどうするかという時に、その姉が急死。母親は施設に入れる体調になっていくが、兄もモンクも、エリートにも関わらず、お金がない。そこで、介護費用の工面と、その女流作家の成功への複雑な思いから、ペンネームを使い、白人社会が喜ぶ経歴を作り上げ、さらに彼らがイメージする黒人像を描いた小説を書き上げる。原稿は、エージェント経由で出版社に売り込まれ、モンクは、ある出版社から桁外れの高額なアドヴァンス料を得た。母親の介護費の問題は解決する。ペンネームを使った小説は、映画化も決まり、ベストセラーにもなり、文学賞も受賞。しかしその文学賞は、「博士号を持つ大学教員で、売れない小説家」のモンクが選考委員だ。授賞式では、自分がその作家であると告白しようとする。ここからタイトルの「フィクション」がぴったりの展開に急に変わり、映画は終わる。原作は邦訳版が現状出ていないようだが、元の小説も読みたくなるほど、おもしろい作品だった。また、中年ならではの「こういう話をよく聞く」ということが描かれていた。例えば、きょうだいに任せっぱなしで、忙しいを理由に実家に寄り付かず、たまにしか顔を見せない子どもは、老いた親や実家のことを全くわかっていないとか、高学歴かつ有名大卒で、一見、経済的クラスが高い職業に就いていても、人生いろいろで、お金がない中年の現実とか、中年になったからこその、きょうだい間の、子どもの頃からの妬み恨みが勃発するが、それでも、きょうだいのことが心配で愛しいとか。人種問題や親のアルツハイマーや介護など、テーマは重いが、コメディ映画である。