日: 2024年3月17日

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    ブックリヴュー:『母 老いに負けなかった人生』(高野悦子 著、岩波書店 刊)

     映画評論家で、東京・神保町にあった岩波ホールの支配人高野悦子(1929~2013)さんが、96歳で亡くなった明治生まれの母・柳さんとの思い出をつづったエッセイ。初版は2000年。著者は、父の急死後11年余、柳さんを介護し、認知症から奇跡的に救い出した。この話を軸に、柳さんの自立した精神と波乱万丈の人生、映画に励まされながら介護に奮闘した日々、柳さんが叶えられなかった夢を自らの夢として歩みつづける著者の半生をふり返る。自分に命があり、介護や介助される身体ではない限り、間もなく訪れるだろう親の介護についてを考える内容だった。今で言う「認知症」を、ひと昔まで一般的だった「痴呆症」や「ボケ」と表現されているので、余計に現実的でもあった。自分が生きて健康ならば、親の介護は自宅でとも思った次第である。

    ISBN:978-4-00-602214-3
    価格:980円+税
    287ページ Cコード:0195
    発行:岩波書店