Cコード:0022
A5判 208ページ
定価:2,000円+税
発行:教育評論社
11歳で中国甘粛(かんしゅく)省からアメリカに移住し、弁護士やプログラマーの顔も持つSF作家の作品。2015年の短編集『The Paper Menagerie and Other Stories』の邦訳単行本『紙の動物園』から7篇を収録した短編集で、本投稿では、同タイトル「紙の動物園」を扱う。舞台は、米国のコネチカット。主人公の「ぼく」であるジャックは、白人の父親と中国人の母親が両親である。カタログに掲載された「英語堪能で香港出身」の嘘のふれこみの母親を父親が買い、アメリカに呼び寄せ、誕生する。幼いジャックは、母親が作った折り紙の動物たちに癒され。しかし、成長するにつれ、アメリカ文化に同化しなければならないというプレッシャーを感じ、自分の伝統や母親から距離を置くようになる。大学生の時に、母親は病死するが、彼に遺した手紙で、ジャックは自分のルーツでもある彼女の生い立ち、そして我が母の、孤独と孤立を知ることになる。以上が物語の要約であるが、なんとも哀しい話だ。道を切り拓くとは、重い苦しみが付きまとい、さらに、家族ですら自分のことを理解しないのが人生なのだ。この世とアメリカは白人社会であり、彼らと彼らが作り上げた価値観によって、東洋人、ここでは中国人差別が存在する現実も、よく伝わった。自身を東洋人と思わず「白人」と思い込んでいる日本人の男性に頻繁に遭遇するが、そういう人以外に、本書はお勧めである。
『鉄道員(ぽっぽや)』
監督:降旗康男
出演:高倉健、大竹しのぶ、広末涼子、小林稔侍、田中好子、吉岡秀隆、奈良岡朋子、志村けん、安藤政信など
1999年
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浅田次郎の短編小説が原作の映画。舞台は北海道。廃線間近のローカル線、定年間近の、幌舞線の終着駅で駅長を務める佐藤乙松の物語。我が子と妻を亡くした時も、休むことなく駅に立ち続けた鉄道員一筋だった人生を振り返る。幻想的で温もりも感じつつ、悲しい話だ。本作の元となる浅田作品は、以前に、北海道の旧炭鉱町の絵を描き続ける画家の方に、勧められたものだった。映画は、小説を再現した内容であり、映画の最初のシーンから、この世を去った、主演の高倉健、田中好子、奈良岡朋子、志村けんが台詞を発する度に、泣けてしまった。主題歌の作曲と編曲は坂本龍一。余計に切ない気持ちに。小林稔侍や大竹しのぶは本当に演技が上手く、吉岡秀隆は雪が似合う俳優だ。広末涼子には、本作のような良い作品に出演してもらいたいなどとも思った。映画を見たら、原作を、必ず読みたくなるだろう作品。